プロジェクトが目指すもの
第4期がん対策推進基本計画では、社会に出る前にがんに罹患した若年AYA世代の持つ構造的な問題が課題として掲げられています。このプロジェクトは、医療機関だけにとどまらない教育機関やその他の地域リソースと連携した具体的な問題解決につながる支援体制の構築を目指しています。
若年AYA世代の就活支援プロジェクト
メンバー
前田 尚子
医師 / 国立病院機構名古屋医療センター 小児科医長
奥村 哲朗
臨床心理士・公認心理師 日本福祉大学 教育・心理学部 心理学科 助教
岡田 晃
キャリアコンサルタント / 学生支援
川崎 由華
1級ファイナンシャルプランニング技能士・社会福祉士 一般社団法人がんライフアドバイザー協会 代表理事
山下 芙美子
社会保険労務士 / 匠社会保険労務士事務所
加藤 映子
キャリアコンサルタント 一般社団法人 仕事と治療の両立支援ネット-ブリッジ
服部 文
1級キャリアコンサルティング技能士 一般社団法人 仕事と治療の両立支援ネット-ブリッジ 代表理事
アドバイザー
堀部 敬三
医師 / 国立病院機構名古屋医療センター 小児科 上席研究員
新平 鎮博
医師/元 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所 情報部長
イベント開催
2025年12月14日、「小児・若年がん経験者の 『 社会に生きる 』 を育む連携と仕組み」 をテーマに、シンポジウムを開催します。患者さんやご家族、医療機関、教育機関、就労支援機関、行政など、この領域に関心をお持ちの方ならどなたでもご参加いただけます。
このシンポジウムは、2023年度から赤い羽根福祉基金の助成を受けて進めてきた若年AYA世代の就活支援プロジェクトの歩みを振り返りながら、見えづらかった課題の背景や、現場での実践から得られた気づきや学びを共有する場です。
病気を経験した子どもや若者が、自分らしく社会とつながっていくために、どんな支援が必要なのか、立場をこえて、皆さんと一緒に考える時間にしたいと思っています。
有識者からのコメント
「若年AYA世代がん患者の就活支援プロジェクト」への期待
堀部 敬三氏
[ 医師 / 国立病院機構名古屋医療センター 上席研究員]
ブリッジが取り組む「若年AYA世代の就活支援プロジェクト」は、がんを罹患・経験した若者が、それを乗り越えて初めて就職活動する際に直面する様々な困難への支援の充実を図ることを目的としており、今回、関係者へのアンケート実施により課題が整理され、それを基に、関係者への啓発、ならびに連携を図ることで支援の充実が期待される。初めての就職活動の多くは、高校、専門学校、大学、大学院の卒業を控えた時期であり、将来への夢と迷いの最中にがんと向き合うことになり、希望通りの進路を描けないこともしばしばである。
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若年AYA世代のがんの部位は、成人がんと異なり、血液(白血病・リンパ腫)が最も多く、次いで、性腺、骨・軟部組織、脳、甲状腺が多い。発生部位により、抱える課題が大きく異なる上、この時期のがん患者は極めて少なく、がん診療連携拠点病院であっても新規患者は平均で年間数人であり、診療科も多岐にわたる。そのため、この世代特有の課題への対応に精通したスタッフが少なく、今回のアンケート結果でも、医療従事者が必ずしもこの世代の抱える課題を理解しておらず、当該患者の存在およびニーズの把握が十分でない現状がみえる。また、大学においては、申し出がない限り病気を抱えた学生の把握が困難であることが明らかになった。現在、がん診療連携拠点病院の指定要件には、就学、就労等について、「がん相談支援センターで対応できる体制を整備すること」や「多職種からなるAYA世代支援チームを設置することが望ましい」との記載が盛り込まれている。 将来の夢が打ち砕かれて社会に出る意欲(労働意欲)が失せる場合もあり、学業中の闘病は個別性が高く、患者は孤立しやすい。社会とつながることで自分の適性の認識と労働意欲の向上が期待される。それゆえに、病院、学校、地域社会のステークホルダーの連携により、これから社会に出るがん経験者を支え、可能性を拓くことが重要である。ブリッジの活動に期待したい。
「若年AYA世代がん患者の就活支援プロジェクト」の意義を考える
新平 鎮博氏 [医師 / 相模女子大学学芸学部・子ども教育学科 教授/ 前 独立行政法人 国立特別支援教育総合研究所 ]
本研究の目的は、若年AYA世代がん患者「就活支援」の具体的な支援を提言することを目指しており、今回の調査は、その始まりといえる。 どの分野も同じであるが、とりわけ医療における治療、教育における特別支援を行う場合には、診断あるいはアセスメントが重要であり、今回も同様に、調査=アセスメントの結果を踏まえて、目的とする就活支援につながるので、今後の研究が期待される。
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平成28年に改正された「がん対策基本法」の中で、「就労」および「学習」と「がんの治療」の両立が盛り込まれたことは画期的なことであることを指摘したい。難病や小児慢性特定疾患に対して、障害として福祉サービスあるいは障害者差別解消法(合理的配慮の提供など)があるが、「日常の生活に復帰する」という考え方を支える制度は、残念ながら「がん」以外には少ない。病気が治ったら社会復帰するのではなく、病気があっても、社会生活を支援することの大切さが、改めて示されたといえる。
労働は、この法律を主管する厚生労働省の管轄であり、産業医を中心に、すでに就労していた人への就労支援が充実されている。あるいは、病院にあるがん相談センターが就労支援を行っている。一方、学習は、文部科学省の管轄であり、両省が協力したことが重要である。この法律をふまえて、文部科学省では、課題であった高校生のがん患者の支援のために、「高等学校段階における入院生徒に対する教育保障体制整備事業」により、地域により格差はあるが、一定の方向性を示し、事業結果を踏まえて、様々な制度改正も行った。
ところが、この隙間になるのが、AYA世代、特に、大学に進学し、就労を控えた大学生の支援である。病気がなくても各大学は、就活支援に苦労しているが、病気=とくに「がん」の場合、その経験やノウハウが大学には少ない(対象者が少ない、あるいは、把握されていないこともある)、このことが示された。これは筆者が行った以前の調査 同様である。障害(病気を含む)のある大学生への学習支援は、日本学生支援機構(JASSO)が、合理的配慮の観点などを例示している。しかしながら、特別支援教育の中でも重要とされる、「自立活動」あるいはキャリア教育については、あまり例示がない。※自立活動は,個々の児童又は生徒が自立を目指し,障害による学習上又は生活上の困難を主体的に改善・克服するために必要な知識・技能・態度及び習慣を養い,もって心身の調和的発達の基盤を培う。障害の中に病弱を教育では含む。この概念は、高等学校段階(特別支援学校の高等部を含む)までの特別支援教育にある。特別支援教育では、障害には「病弱」を含む。
大学生のがん患者の就労支援(もちろん、採用というハードルはあるが)、そのために必要な、自立活動あるいはキャリア教育の視点を考えると、本研究により、今後、具体的な支援ツールなどの開発が期待される。
本研究に、多くの方が自主的に参加して、よりよいものができることを祈願している。
2023年「若年AYA世代患者の就活に関するアンケート」
若年でがんに罹患する人は、がん患者全体から見ると非常に少ないため、就職の課題についてはこれまで個人や家庭の困りごととして埋没する傾向にありました。そこで若年AYA世代の患者さんが接する立ち位置にある施設・人を対象に、愛知県下において現状把握のための調査を実施しました。
調査概要
医療機関
愛知県内の医療機関 28 機関(がん診療連携拠点+県のがん拠点)
医師 ︓N=97(若年AYA世代がん患者の診療に携わる医師)がん相談員 ︓N=52(AYA世代患者の支援経験の有無を問わない)
マクロミル クエスタントを使用したwebアンケート (依頼状と企画説明書、対象職種ごとのチラシを機関宛てに郵送。一部、返送された回答済み質問紙を事務局にて代理入力)
若年のAYA世代(おおむね10代後半~20代前半、これから社会に出る あるいは出たばかり)のがん患者(サバイバー含む)で以下の立場の人を想定
新卒︓ 卒業してすぐ就職する人第二新卒︓ 卒業後に就職し、比較的短期間(3年程度)で転職活動をする人 既卒者︓ 卒業後おおむね3年以内で、社会人経験がない(就職や進学をしていない)人
大学
愛知県内の大学 53 機関 (キャンパスの立地が分かれている1大学2機関含む)
大学(職員)︓ N=21 (学内の就職活動支援・対応を統括する部署の職員)キャリア支援者︓ N=20 (キャリアセンターなどで直接学生の就職活動の支援に携わる人)
マクロミル クエスタントを使用したwebアンケート (依頼状と企画説明書、対象職種ごとのチラシを機関宛てに郵送。一部、返送された回答済み質問紙を事務局にて代理入力)
がんや難病などの身体的な疾患(メンタル疾患を除く)の経験があり、社会生活に影響を生じることが予測される学生を想定
アンケート結果を受けたプロジェクトの提案
提案① 主治医→相談員「支援ニーズの拾い上げ・把握」
潜在的な支援ニーズを持つ患者に出会える唯一の存在は、主治医のみ
主治医を支援フローの起点と位置づけ、主治医は患者の支援ニーズを拾うための声掛けをする
診療の負荷にならないよう、患者を相談支援センターに紹介できるツールを用いる
相談員は患者の話を聴き、支援ニーズの把握をする
提案② 専門支援機関「患者の個別性を踏まえた情報ギャップの解消」
新卒独自の就活の支援は、医療機関だけでは困難
治療とともにある患者は、心身の変化により著しい自己不一致を起こし、就活に不可欠な自己理解に取り組む障壁となることも多いが、その在り方は個別性が高い
多くの学生に対する就活支援をする大学は、がんのように若年発症の頻度は低いが個別性が高い学生に対する十分な知識や経験がなく、対応が困難
医療機関と大学の情報ギャップを埋めるため、病気とともに働くための専門支援機関は、相談員から紹介された学生の、治療による体調の変化や治療経験の言語化、価値観や能力の明確化などの自己理解支援を実施し、大学やわかものハローワーク、就労移行支援事業所などに適切につなぐ
提案③ 大学「学内外で連携し支援できる仕組みをつくる」
大学は専門支援機関から学生の支援情報を受け取れる窓口を設定し、健康情報として一元管理する
個人情報に留意して、キャリアセンター、学生課、教員、学生相談室等に必要な情報共有を行う
就活を含めた学生生活に疾患由来の困りごとが生じたときに、医療機関・専門支援機関と連携できる関係性を維持する
支援フロー
すべてのステークホルダーが支援フローにより連携することで、 困りごとの抱え込みを防ぎ、適切な支援につなぎ、 若い世代のがん患者さんの円滑な就活を支援することができます
アンケート結果
はじめに
はじめに
AYA世代とは
Adolescent and Young Adult(思春期・若年成人)の略で、おおむね15~39歳とされる。このプロジェクトでは、10代後半~20代前半を「若年AYA世代」と位置づけ、がんを経験して社会に出る人に特化した支援モデルの構築を目指す。
愛知県における若年AYA世代のがん罹患者数(全部位、2019年)
愛知県で2019年にがんになった15~24歳は176人。この年齢は、高校から大学の在学期間に重なる。がんになった全年齢の総数から見ると少数だが、毎年このように新たにがんに罹患する若者が一定数いるという事実を示している。医療の進歩により、がんは長く付き合う病気になりつつあるいま、社会生活と折り合うための適切な支援が必要とされる。
若年AYA世代がん患者を取り巻く課題
若年AYA世代がん患者を取り巻く課題
教育現場における両立支援
教育現場ではがん教育が始まったばかりで、病気の経験を持つ人に対する理解促進の途上にある。多様性の観点から、在学中の受け入れ支援が始まっているが、疾患経験をもつ学生のキャリア形成支援は未発達な段階にある。そのため、病気の治療を経て心身の変化を踏まえたキャリア支援を実施できる受け皿が不在の状況にあると考えられる。
若年AYA世代固有の就労問題
YA世代は15-39歳と幅広く、人生における不確定要素が多い世代として共通する課題も多い一方、こと日本独自の新卒一括採用の雇用慣行においては、罹患のタイミングが社会に出る前か後かによって大きく状況が異なる。学生を中心とした若年層に限定した「これから社会に出る患者」に適した支援方法を確立する必要がある。
医療従事者のかかわり
医療従事者は長期にわたる治療期間を通じて若年AYA世代患者とかかわり、その後の社会適応への課題に思いを寄せる人も多いが、医療の枠を超えた地域社会に及ぶ直接的な支援を実施することが困難である。また有効な連携先として機能する専門性の高い支援機関を見出せないジレンマを抱えていることが予測される。
問題の潜在化
治療による心身sの変化は個人の能力に影響を及ぼすことも多いが、特に若年層は社会とのかかわりが限定していることから、現実吟味を経た自己理解が適切に行われないことが多い。本来は同じ境遇下で陥りやすい課題として社会的な対策が必要とされるが、本人あるいは家族の限局した問題として複雑化・孤立化するケースが散見される。
国の施策として求められる就労支援
第2期がん対策推進基本計画で初めて国の施策となった「がん患者の就労支援」 は第4期でますます重要性を増している。中でも若年AYA世代に対する支援については、その固有なニーズに対応できる相談支援体制が次のように求められている。
効率的な医療・福祉・保健サービスの提供や、就労・教育支援等を行う仕組みを構築 することで、社会的な課題を解決し、がん患者及びその家族等の「全人的な苦痛」の緩和を図る (「第1 全体目標と分野別目標」より)
質の高い相談支援体制を持続可能なものとするためには、全てのがん相談支援センターで持つべき機能や対応の範囲について検討し地域の実情に応じた集約化や役割分担を行うことが必要 ではないかとの指摘がある(「第2 分野別施策と個別目標」相談支援課題より)
多様化・複雑化する相談支援のニーズに対応 できる質の高い相談支援体制の整備を推進する
拠点病院等と民間団体による相談機関やピア・サポーター等との連携体制の構築 について検討する(「第2 分野別施策と個別目標」相談支援 施策より)
小児・AYA世代のがん経験者は、晩期合併症等により、就職が困難な場合があるため、就労支援に当たっては、成人でがんを発症した患者と、ニーズや課題が異なる ことを踏まえる必要がある(「第2 分野別施策と個別目標」小児・AYA世代 課題より)
小児・AYA世代のがん経験者の就労における課題の克服に向けて、ハローワークや地域若者サポートステーション等を含む就労支援に関係する機関や患者団体と連携 した取組を引き続き推進する(「第2 分野別施策と個別目標」小児・AYA世代 施策より)
調査概要
医療機関
愛知県内の医療機関 28 機関(がん診療連携拠点+県のがん拠点)
医師 ︓N=97(若年AYA世代がん患者の診療に携わる医師)がん相談員 ︓N=52(AYA世代患者の支援経験の有無を問わない)
マクロミル クエスタントを使用したwebアンケート (依頼状と企画説明書、対象職種ごとのチラシを機関宛てに郵送。一部、返送された回答済み質問紙を事務局にて代理入力)
若年のAYA世代(おおむね10代後半~20代前半、これから社会に出る あるいは出たばかり)のがん患者(サバイバー含む)で以下の立場の人を想定
新卒︓ 卒業してすぐ就職する人第二新卒︓ 卒業後に就職し、比較的短期間(3年程度)で転職活動をする人 既卒者︓ 卒業後おおむね3年以内で、社会人経験がない(就職や進学をしていない)人
大学
愛知県内の大学 53 機関 (キャンパスの立地が分かれている1大学2機関含む)
大学(職員)︓ N=21 (学内の就職活動支援・対応を統括する部署の職員)キャリア支援者︓ N=20 (キャリアセンターなどで直接学生の就職活動の支援に携わる人)
マクロミル クエスタントを使用したwebアンケート (依頼状と企画説明書、対象職種ごとのチラシを機関宛てに郵送。一部、返送された回答済み質問紙を事務局にて代理入力)
がんや難病などの身体的な疾患(メンタル疾患を除く)の経験があり、社会生活に影響を生じることが予測される学生を想定
アンケート結果
① 国の両立支援推進の施策を知っているか
医療機関の中では、医師は診療の現場ですべての患者と接点を持ちうる唯一の立場にあるが、両立支援の施策(P.3参照)は周知されていない。また、年間のがん罹患者数(P.2参照)から、一定数の学生ががんに罹患していると推測されるが、大学では両立支援の施策はほとんど知られていない。
② 過去5年における支援人数
それぞれ就労相談に対応する役割を持つ医療機関の相談員、大学のキャリア支援者であるが、支援ニーズを持つ若年AYA世代がん患者が来談して出会うことがなければ、実際の支援をスタートすることはできない。過去5年間において、一部の医療機関では活発に相談が行われているが、全体では相談対応が進んでいない状況であると見られる。
③ 対象者の就労・就活状況の把握
医師は診療において直接若年AYA世代のがん患者に接する機会を持つ立場だが、診療内容とは異なる患者の社会的背景を、能動的に把握する動きはまだ主流ではない。一方、院内で就労相談の役割をもつ相談員は、自らがん相談支援センターに来訪する患者の対応に限られるため、院内における若年AYA世代がん患者の支援ニーズ全体のボリュームが把握できていないと考えられる。
大学においては、がんや難病などの身体的な疾患を経験した学生の就活状況について、ほとんど把握ができていない。アンケート調査を実施する過程において、大学からは「該当する学生の対応経験がないため回答できない」旨の連絡が度々寄せられたことからも、当事者である学生が、自らがんに罹患した状況を開示して相談に来ない限り、大学としては当該学生の就活状況の把握や対応が難しいことが推測される。
④ 医療機関と大学が「課題」として感じていること
医療機関では、若年AYA世代がん患者が治療と向き合う中で潜在化している就労への思いに対して、能動的に働きかけ、ニーズとして顕在化させて把握する取り組みが実施できていない。「がんとの共生」を図る施策の中、必要性は認識しながらも、院外に及ぶ社会的な活動に関する支援に対応できる十分なリソースも有していないと考えられる。
大学では、ニーズを有する学生本人からの支援の申し出を課題とする意見が突出して多かった。一般には発達障害やメンタルヘルスの課題を抱える学生の対応を迫られるケースが多いが、がん経験のある学生は存在の確認自体ができていないとみられる。学内で十分なニーズ把握や対応経験の蓄積ができていないことに伴って、学外との連携支援もまた未整備であると見られる。
⑤ がん経験のある学生の支援ニーズの把握が期待される部署
学内外において、保健センターは企業における産業保健の役割を担える可能性がある。
⑥ がん経験のある学生の把握、対応フロー、進路把握
学内外において、保健センターは企業における産業保健の役割を担える可能性がある。
⑦ 医療機関と大学が重要だと考える「連携」
医師は入院などで患者の日常を見ているせいか、患者のコミュニティを気にかけている。院内では主治医と相談支援センターの連携を双方が重視しており、円滑に連携できる手段が求められる。就職活動という固有な患者ニーズに対する専門的な支援を要している。
医療機関において、主治医は相談支援センターの重要性を認識していながらも、実際の連携は十分にできていないと考えられる。
家族、保健センターと、ニーズ把握を強く意識した連携先が挙がった。対象者固有の課題に対応できる支援機関との連携も求められている。医療機関との支援連携の重要性に対する意識喚起が必要か。
家族、保健センターと、ニーズ把握を強く意識した連携先が挙がった。対象者固有の課題に対応できる支援機関との連携も求められている。医療機関との支援連携の重要性に対する意識喚起が必要か。
がん経験のある学生が利用できる相談窓口を、多くの大学で備えているとは言えない。窓口を設置する大学でも、当事者である学生に情報を届けるために、より多くの学内の関連部署に周知し、つなぐ体制をつくることが必要だと考えられる。
⑧ その他のアンケート項目(参考)
考察
アンケート実施から見えてきた支援の現状
医療機関 大学 ⚫ 就労支援の必要性は院内に浸透 がん拠点病院には国のがん対策で求められる役割もあり、患者が持つ就労の課題やその対応の必要性の理解は浸透しつつある。しかし、支援の実践には十分につながっていないという現状がある。⚫ 患者の潜在ニーズの喚起が困難 若年AYA世代のがん患者は、治療と向き合う中で社会に活きる適性・能力、働く自己の将来像が明確に描けず、就労支援ニーズが潜在化する傾向にある。現状、医療機関では患者の潜在ニーズへの働きかけ、掘り起こしができていないことがわかる結果となった。⚫ 現状の課題は3点 ① 患者自らの支援の申し出がないこと ② 院内に患者のニーズを能動的にキャッチアップする仕組みがないこと ③ 患者の初めての就職のための専門的な支援につなげられていないこと⚫ 医療機関が重視する連携支援 ① 患者を孤立させないコミュニティ ② 院内における主治医と相談支援センターの相互連携 ③ 就活の支援ニーズに対応できる外部の専門支援機関との連携⚫ 該当する学生を把握できない・認識できない 今回の大学向けアンケートは回答率40%(回答︓21件、辞退連絡︓13件、無回答︓19件)であり、全体の傾向把握に十分なボリュームとは言えない。しかし、回収過程の中で、大学が対応に苦慮する状況が見えてきたことは有意義な成果だと考えられる。 《回収過程の状況》 ア ンケートキットの郵送後、全大学に電話で趣旨説明を行い、その後、未回答機関の就活担当部署に宛てて段階的にメール、ハガキ、返送用封筒入り封書を送り、回答協力の働きかけを粘り強く続けてきた。その都度、「該当する学生を把握していないため、大学として回答できない」とする声が複数聞かれ、正式な回答とは異なるものの、一定の傾向として参考となる情報が得られた。⚫ 「がん経験のある学生の把握」が最大の課題 前項の状況およびアンケート結果から、大学の現状としては、がん経験のある学生への対応方法を検討する以前に、支援ニーズを持つ学生の存在自体を把握できないことが最大の課題である。該当する学生に出会っていないため、対応経験の蓄積もできておらず、 ニ ーズ把握や対応方法について具体的に考えられる状態にはない。⚫ 大学が重視する連携支援 ① 前述したとおり、対象となる学生把握のため、保護者と保健センターに対して連携の期待が高い。 ② 個人情報の壁を意識しながらも、病気を持つ学生のニーズに対応できる外部の専門支援機関との連携を必要としている。
若年AYA世代がん患者の特性と必要な支援
治療による変化により閉塞感にとらわれがちで、自由に可能性を描き、吟味することが困難になる
「能力をどう社会に活かすか」という中長期的キャリア視点を持ちにくく、「どこなら働けるか」という近視眼的思考に陥りがち
予期せぬ経験の積み重ね、心身の変化により、少なからず自己不一致を来す
自己の受容や理解が不十分な中で、アイデンティティが拡散する
両親の庇護環境下にいることも多く、家族間の意見の相違に悩むことも多い
同じような状況の患者同士のつながりが得られず、就活におけるモデリングが困難
支援ニーズの掘り起こし • 現場に負担のかからない方法で、患者の潜在ニーズにアプローチし、支援フローにのせる • 本人の意思を尊重し、確実に必要な支援に到達するようにつなぐ 就活の目的と全体像の共有 • 現代社会における新卒就活事情を踏まえた支援の全体像を知る • 就活の目的を「仕事の確保」だけではない、人生における中長期的キャリアビジョンとして位置付ける 支援フローの共有・役割と分担の明確化 • 若年AYA世代の就活で関係する領域を横断して支援フローを描き、全体で共有する • それぞれの機関・部署・職種が支援フローのどの役割を担うのか明確化する 各機関の窓口で情報を一元管理 • 医療機関ではがん相談支援センター、大学では保健センターなど外部とつなぐ窓口を設定 • 各窓口では、外部とやり取りする情報を一元的に取り扱う 若年AYA世代患者の特性に留意した対応 • アイデンティティが確立していない世代で大きく自己不一致を起こす存在であることを前提に支援する • 疾患特性やその後の影響に留意して自己理解を促し、就活に入る準備支援を行う 機関同士の情報ギャップを埋める • 各機関の支援特性に着目し、すぐに支援開始可能なインプット情報を調えて連携する • 必要に応じてフローの上流に戻るなど、ステークホルダー全体のかかわりで確実に支援を進める
今後のAYA就活における連携支援
医療機関
支援特性
(医師)治療のために必ず患者との接点を持つ
今後の治療方針や現在の体調、今後の見通しや配慮すべきことなど、医療情報を持っている
役割
医師
支援の起点、ニーズ喚起
該当する年齢の患者に院内連携パンフレット を渡し、潜在ニーズを喚起する
相談支援センターにつなぐ
相談員
内部・外部連携のハブ機能
患者の支援ニーズを把握する
院外連携パンフレット を渡し、患者の希望に沿って外部連携支援を開始
ブリッジ
支援特性
医療情報をもとに面談を重ね、治療による自己不一致の解消のため長期にわたり伴走する
同じような状況下にある学生支援のコミュニティでグループ支援を実施したり、経験を役立てたりすることができる
役割
治療とともにある自己の捉え直し
治療による体調変化を踏まえた自己分析、治療経験の言語化
社会に出る気持ちのゆらぎに向き合い、就活へのマインドセットを支援
大学の同行支援、問い合わせ対応
キャリアセンターとの連携支援
立場に応じて大学だけではなく、他の支援機関(ハローワーク、就労移行支援、リハビリセンター)との連携
孤立させない居場所づくり
大学
支援特性
年ごとに変化する就職活動の流れをキャッチアップして対応する
企業の採用活動のタイミングに先駆けて、情報提供を行う
業界研究、自己理解、仕事理解、キャリア形成について指導する
役割
固有ニーズのある学生の就活支援
保健センター等、学生の健康状態を一元管理できる窓口にて学内外から寄せられる支援ニーズを受け付ける
学生の希望に沿って、学内部署への連絡・連携
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