医療機関大学
⚫ 就労支援の必要性は院内に浸透
がん拠点病院には国のがん対策で求められる役割もあり、患者が持つ就労の課題やその対応の必要性の理解は浸透しつつある。しかし、支援の実践には十分につながっていないという現状がある。
⚫ 患者の潜在ニーズの喚起が困難
若年AYA世代のがん患者は、治療と向き合う中で社会に活きる適性・能力、働く自己の将来像が明確に描けず、就労支援ニーズが潜在化する傾向にある。現状、医療機関では患者の潜在ニーズへの働きかけ、掘り起こしができていないことがわかる結果となった。
⚫ 現状の課題は3点
① 患者自らの支援の申し出がないこと
② 院内に患者のニーズを能動的にキャッチアップする仕組みがないこと
③ 患者の初めての就職のための専門的な支援につなげられていないこと
⚫ 医療機関が重視する連携支援
① 患者を孤立させないコミュニティ
② 院内における主治医と相談支援センターの相互連携
③ 就活の支援ニーズに対応できる外部の専門支援機関との連携
⚫ 該当する学生を把握できない・認識できない
今回の大学向けアンケートは回答率40%(回答︓21件、辞退連絡︓13件、無回答︓19件)であり、全体の傾向把握に十分なボリュームとは言えない。しかし、回収過程の中で、大学が対応に苦慮する状況が見えてきたことは有意義な成果だと考えられる。
《回収過程の状況》
ア ンケートキットの郵送後、全大学に電話で趣旨説明を行い、その後、未回答機関の就活担当部署に宛てて段階的にメール、ハガキ、返送用封筒入り封書を送り、回答協力の働きかけを粘り強く続けてきた。その都度、「該当する学生を把握していないため、大学として回答できない」とする声が複数聞かれ、正式な回答とは異なるものの、一定の傾向として参考となる情報が得られた。
⚫ 「がん経験のある学生の把握」が最大の課題
前項の状況およびアンケート結果から、大学の現状としては、がん経験のある学生への対応方法を検討する以前に、支援ニーズを持つ学生の存在自体を把握できないことが最大の課題である。該当する学生に出会っていないため、対応経験の蓄積もできておらず、
ニ ーズ把握や対応方法について具体的に考えられる状態にはない。
⚫ 大学が重視する連携支援
① 前述したとおり、対象となる学生把握のため、保護者と保健センターに対して連携の期待が高い。
② 個人情報の壁を意識しながらも、病気を持つ学生のニーズに対応できる外部の専門支援機関との連携を必要としている。